リアルな恋は落ち着かない
「遅いぞ!まりんちゃんの担当なんだから、もっと早く来て、準備万端にしておかないと」

「そうだぞ!ほら、ネクタイも曲がってるぞ。清潔感が大事なんだから」

「・・・はあ」

今回の仕事に乗り気ではない五十嵐くんは、微妙な相槌を打ちながら、ネクタイの位置をキリリと直した。

そして自分の席に座って今日の資料を取り出すと、仕事の流れを確認していた。


(大変そうだな、忙しいのに・・・)


まりんちゃんに対応しながらいつもの仕事をこなすのは、かなり労力がいるだろう。

心の中でエールを送ってみるものの、私に手伝えることがあるかどうかはわからない。

「みんな、おはよーう!そろってるかー?」

9時を少し過ぎたところで、向坂部長が現れた。

部長は、フロアの入り口でにこにこしながらみんなを見ている。

そしてその後ろには、大きな人影がいくつか見えた。

「紹介するぞー。今日から金曜日まで、一緒に仕事をするオレンジテレビの人たちです」

「よろしくお願いしまーす」

部長の声に、20代から40代くらいまでの男性たちが、ぞろぞろと壁の後ろから現れた。

その数7人。私たちは拍手で迎える。

「ええと、一応簡単に紹介させていただきますね。こっちから責任者の佐竹さん、ADの富山さん、で、その隣が松本さんで・・・」

向坂部長は、自分の右隣に並んだスタッフたちを順に紹介していった。

皆それぞれ、台本や大きな機材を持っている。

独特の空気感に包まれて、一瞬で、職場が別物になったようだった。

「それで次が・・・お待ちかねだな。みんな興奮しすぎるなよー。・・・ええ、こちらに来ていただいて・・・。はい!こちらが鈴島まりんちゃん」

部長の声に、まりんちゃんが壁の後ろから飛び跳ねるように現れた。
< 140 / 314 >

この作品をシェア

pagetop