リアルな恋は落ち着かない
そして時刻は17時。

まりんちゃんの撮影終了時刻になった。

腕時計を確認したマネージャーの中尾さんが、スタッフさんやまりんちゃんに順に声をかけていた。

「・・・ああ、そうですね。はーい、じゃあ今日はここまでー!」

プロデューサーである佐竹さんの声に、スタッフのみんなが機材を下ろした。

私たち社員も、緊張の糸がゆるまって、職場全体がほっとする。

テレビカメラが回っていると、たとえ映っていなくても、やっぱりみんな落ち着かないのだ。

「みなさんも、どうもありがとうございました」

スタッフさんが口々に言い合い、私たち社員も「おつかれさまでした」と一旦手を止め挨拶をした。

けれどまりんちゃんだけは、まだ撮影を続けたいようで、中尾さんに甘えるような声を出す。

「早いなあ・・・。もうちょっとダメですか?」

五十嵐くんの隣から、席を立たないまりんちゃん。

しかしマネージャーである中尾さんは、毅然と首を横に振る。

「だめです。次の仕事があるでしょう。18時に品川だから。あんまりゆっくりしてられないわよ」

「・・・はあい」

中尾さんの言葉に、まりんちゃんは渋々頷く。

そして一瞬で表情を切り変えて、五十嵐くんにアイドルスマイルを向けていた。

「五十嵐さんと一緒だと、時間があっという間です。残念ですけど・・・今日も勉強になりました。どうもありがとうございました」

五十嵐くんに、かわいらしく、かつきちんと挨拶をするまりんちゃん。

本当に、どうしてここまで変われるものかと、不思議でならないくらいだった。
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