リアルな恋は落ち着かない
思い出したくない場面が、何度も何度も甦る。

そのたび私は首を振り、記憶を消そうと努力した。


(・・・なんて。ダメだ、まだ仕事中なのに)


ただでさえ、今日は仕事がはかどらなかった。

定時の時刻は過ぎたけど、これから、しなくてはいけない仕事がまだたっぷりと残っている。

一度気持ちを切り替えて、残業をがんばらなくてはならないのだ。


(とりあえず休憩しよう・・・)


こういう時は、やっぱり甘いカフェラテがいい。

2階の自販機に行こうと廊下の端にある階段へ向かう。

そして段差を下り、踊場まで行ったところで、後ろから「橘内さん」と声をかけられ振り向いた。

「!」


(・・・五十嵐くん・・・!)


「すいません」

長い足で、階段を滑るように下りて来た。

そして私の元に辿り着くと、一度呼吸を整えた。

「あ・・・な、に?」

「いや、ちょっと。話をしておきたくて」

高い位置から、真っ直ぐな声が耳に響いた。

私はドキドキしながらも、勇気を出して彼を見上げた。
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