リアルな恋は落ち着かない
「やってくれるか」

「う、うーん・・・。でも、衣装もなにも持ってないし・・・」

悩みながら答えると、ももさんは「まかせろ!」と言って路上にさっと座り込み、右肩にかけていた大きな紙袋の口を開けた。

まさか・・・と思って見ていると、そのまさかはまさに予感的中だった。

「ちゃんと二人分持ってきたぞ!ゆりりんは主役の『スターラブリー』、私はラブリーのライバルの『スウィートパール』の衣装をな!」

じゃーん!とももさんは二つの衣装を宙に掲げた。

私は衝撃的すぎて、あんぐり口を開けてしまった。


(それを・・・私が着るの!?)


スターラブリーは、男子に大人気の美少女アイドルキャラである。

オフの設定は女子高生なので、ももさんが出したコスプレ衣装は、超ミニスカートのセーラー服だ。


(無理・・・本当に無理・・・)


私が後ずさると、ももさんは逃がすまいと私の足をがっしりつかんだ。

「頼むー!ゆりりんー!一生のお願いだー!」

「も、ももさん・・・」

「頼むー!後生だー!」

道行く人が、私とももさんを怪訝そうに眺めていく。

私は恥ずかしさでどうしようもなくなって、この場を収めたいがために、思わず「わかった」と言いたくない言葉を口走らずにはいられなかった。

「やってくれるか!!」

「うん・・・。でも、入場したらすぐにまた着替えるからね」

「ありがとう!!ゆりりん、本当にありがとう!!」

ももさんは立ち上がり、私の掌をがっしり握ってブンブン振った。

「じゃあ・・・早く行こう!」

私は注目状態にあるこの場から、一刻も早く逃げたくて、そのままももさんの手をとって、急ぎ足でビックサイトに向かって行った。





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