リアルな恋は落ち着かない
(・・・あっ!)


五十嵐くんは、逆に驚いたようだった。

私は、頬が紅潮するのを自覚した。


(こんな時に・・・。これじゃあ、好きって言ったみたいじゃないか・・・)


今更、取り消すこともできなくて、戸惑いながら口を閉ざした。

同様に、五十嵐くんも思案するような顔をして、顎に手をかけ私のことを見下ろした。

「だったら・・・他のことですか」

「・・・ううん・・・」

「でも・・・なにもないって顔じゃない」

そう言って私を見る目は、心配そうに揺れていた。

この瞳が嘘をついているなんて、どうしたって思えない。


(どうしたら・・・)


言ってしまおうか・・・と頭の中でぐるぐる悩む。

けれどそのたび、思いとどまり口をつぐんだ。

「・・・すいません。困らせてますね。言いたくないなら、今日はもう聞かないけど。

なにかあるなら・・・いつでも、言ってください」

そう言うと、彼は私の唇に、触れるくらいのキスをした。

それは、私を安心させてくれるような、優しい優しいキスだった。

なのに。

私の胸は、苦しく痛む。

これは本当なのかって。

それともやっぱり、気を使わせているのかなって。

どうしてもそれがわからなくって、切ない痛みが増していく。

この甘く優しい感触は、ごまかすようなものじゃないって、そんなふうに思うのに。

「・・・橘内さん?」

「・・・うん・・・」

「・・・・・・。すいません、やっぱり、こういうのはよくなかったか・・・」
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