リアルな恋は落ち着かない
目を覚ますと、部屋の中は真っ暗だった。

枕元の時計を見ると、いまは夜の9時半だ。


(わ・・・ずいぶん眠ってたんだ・・・)


ぼうっとしながら、それでもなんとか身体を起こす。

ベッド脇のカーテンを開けると、外灯の光が入り、部屋が少し明るくなった。


(家はまだ、誰も帰ってきてないのかな)


ふっと耳をすますけど、物音は何も聞こえない。

そういえば、母も準夜勤だったかもしれないと、今になって思い出す。


(となると、帰ってくるのは夜中だもんね・・・)


兄も父も、いつも通りなら帰宅は22時過ぎになる。


(もうすぐ帰ってきそうだけど・・・お腹空いたし、先にごはん食べてよう)


そんなことを考えながら、とりあえず、と私はカバンに手を伸ばす。

そして中から、スマホを取り出して電源を入れた。


(ん?・・・あっ、ももさんだ!)


画面に表示されたのは、LINEの受信メッセージ。

送信者を見て、私は途端に嬉しくなった。

LINEをしている相手なんて、家族とももさんだけだけど。

『ご無沙汰!』

『元気か~』

『てっぱくに行ってきたぞー。ゆりりん好みのお宝グッズも買ってきたぞ』

『近々飲みに繰り出そう!』


(てっぱく・・・鉄道博物館のことだよね)


そういえば。五十嵐くんから、ももさんと宇佐美くんがデートに行くと聞いていたっけ。

楽しそうな報告を読み、自然と頬が緩むけど。


(私たちも、デートの予定だったんだよね・・・)
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