リアルな恋は落ち着かない
「ほら、泣かない泣かない」

そこで、阿部課長がスーツのポケットからすっとハンカチを取り出して、美瑠久ちゃんに手渡した。

美瑠久ちゃんは鼻をずずっと大きくすすると、そのハンカチを無言で受け取り、こぼれた涙をぎゅっと拭く。

「多分、係長の言う通り、まりんちゃんは宗田さんが羨ましかったんじゃないのかな。ほら、今日はかなり色っぽいから・・・。

華奢は華奢でかわいいけどね、オレは少しぽっちゃりした子の方が好きだなあ。・・・ああ、もちろん、宗田さんの足は太くないよ。

どっちかというと細いくらいで・・・バランスよくて魅力的」

「ですよね」と阿部課長が部長と係長に同意を求めると、二人は必死に「うんうん」頷く。

美瑠久ちゃんは、再度鼻を大きくすするも、ちょっと落ち着いたようだった。

けれど。

「そうなんです・・・。細すぎて色気がないって笑われて・・・」


(・・・ん?)


何気なく、耳に入ったまりんちゃんの声。

席に戻ったらしい彼女は、周りの男性たちにシュンとしながら何かを訴えかけていた。

なんだか嫌な予感がして、思わず聞き耳を立ててしまう。

どうやら、美瑠久ちゃんのことを話しているようだった。

「鏡に映った私の足を、『ガリガリ』って、指さしながら言ったんですよ・・・。細すぎること、気にしてるのに・・・」


(えっ!?)


「ほ、ほんとに!?いや、細いのは華奢でかわいいと思うよ」
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