リアルな恋は落ち着かない
店を出ると、彼はすぐに空車のタクシーをつかまえた。

そして私も、彼に手を引かれたまま、一緒に車に乗り込んだ。

額に鉢巻、そして袴姿の彼に、運転手さんは一瞬「お!?」と驚いた顔をしたけれど。

無口なタイプの方だったのか、特にツッコんではこなかった。




そして辿り着いたのは、五十嵐くんの一人暮らしのマンションだった。

ぱっと見1LDKの、無機質な印象のシンプルな部屋。

玄関を入ってすぐの場所に、6畳ほどのリビングが広がる。

そのフローリングの真ん中の、カーペットが敷かれた位置に、私は袴姿の彼と正座で向き合っていた。

「・・・」

「・・・」

甘いドキドキ感とともに、妙な緊張感が漂った。

袴姿に正座の彼は、これから稽古でも始めそうなほど、シャンと背筋を伸ばしていたから。

そしてしばしの沈黙の後、五十嵐くんは咳払いして、気まずそうに話を切り出す。

「・・・勢いで連れて来ちゃいましたけど」

「すいません」と謝る彼に、私は小さく頷いた。

「とりあえず・・・何から説明したらいいかな。何から聞きたいですか」

リアル光之助の五十嵐くんが、真面目な顔で問いかける。

私はいまだに直視ができず、うつむきながら返事した。

「何から・・・えっと・・・全部、かな・・・」

何からもなにも、とにかくすべてがわからないから。

優勢順位をつけるにも、どうしたらいいかわからなかった。

「・・・ですよね」

「うん・・・」

「じゃあ・・・そうだな。とりあえず、花山さんが急に現れた経緯から」
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