リアルな恋は落ち着かない
「からかってるわけじゃないですよ。花山さんは大真面目だったし、本気でオレも焦ってたんで・・・。

正直、コスプレなんて普段は死んでもしないけど。ちょっと、というか、かなり必死で」

照れ隠しのように、五十嵐くんは大きな手を口元に当てた。

その様子は、袴を着た姿であっても、いつもの彼に違いなかった。

けれどもう、五十嵐くんでも光之助でも、どちらでもいいと私は思った。

「・・・そういう経緯で、数年ぶりに袴を着ました。時間と役割を考えると、もう、この格好で店に出て行くしかなくて」

「うん・・・」

懸命に話してくれた、彼の気持ちが伝わった。

私はなんだか気持ちがゆるんで、ほっと笑顔で頷いた。

「すみません、本当に。橘内さんには、嫌な思いをたくさんさせたと思うんですけど」

「ううん。大丈夫だよ。もう・・・いろいろちゃんとわかったし」

これは本当の気持ちだった。

何度も感じた胸の痛みも。

まりんちゃんから言われた言葉も。

こうして彼が話してくれて、今は全て、どこかに消えてしまったようだった。

「・・・じゃあ、誤解は解けましたか」

「うん」

「怒っても、ない?」

「・・・うん」

「それなら・・・最後に言ってた言葉って、まだ変わってないですか」

「・・・え?」
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