リアルな恋は落ち着かない
(別れ際にキスはしたけど、それ以上のことは、本当になにもなかったし・・・)


宇佐美くんの言う通り、五十嵐くんは戦隊レッドで、そしてやっぱり光之助。

理想通りの・・・ううん、理想以上のリアルな彼氏だと思う。

現実世界で、こんな幸せに浸れる時がくるなんて。

やっぱり夢じゃないのかと、私はこっそり、自分の頬を何度もつねって確かめた。





それから、各々好きな料理を頼み、雑談しながら食事を終えた。

そして食後のコーヒーが届けられると、ももさんが「そうそう」と思い出したように手をたたく。

「今日の本題を忘れてた。この話をしたくて二人を呼び出したんだった」

言いながら、ももさんはいつものお気に入りのポシェットから、折りたたまれた紙を出す。

そしてそれを広げると、「ほい」と私に手渡した。

「これ、鈴島まりんの直筆念書。もつ鍋屋から彼女を追いかけてった後、これだけ書いてもらったんだ」


(念書・・・?)


紙には、「もうしないわよ!」とだけ殴り書きで書かれていた。

これが念書というのかどうか、私にはよくわからなかった。

「あれだけはっきり断られたし、もう五十嵐のことは諦めるって、口では言ってたんだけど。

彼女は想像以上に厄介なタイプだったから。念のため・・・二度とゆりりんたちには関わらないって、口だけではなく紙に書いて約束をしてもらったんだ」

「完璧だろう」とももさんがどや顔になる。

そして宇佐美くんが話を続ける。

「初めは、『絶対に書かない』って言い張ってたんですけどね。花山さんが話をしてたら、『仕方ないわね』って言って、これだけ書いてくれたんです」
< 278 / 314 >

この作品をシェア

pagetop