リアルな恋は落ち着かない
よし!そうだ、そうしよう、と、半ばそうしなければいけないほどの暗示にかかってしまった私。


(午後までには言わないと!午後までには・・・)


それからの私は、仕事をしながらも上の空で、ただただ五十嵐くんが一人になる機会をうかがっていた。

そして。

10時を少し回ったとき、五十嵐くんがついに席を立ちあがり、フロアの外に出て行った。


(よしっ!いまがチャンス!!)


トイレに行くのか、飲み物でも買いにいくのか、そこはわからなかったけど、私はもはやストーカーのように、彼の後ろをついて行く。

視線の先の五十嵐くんは、私の尾行には気づかずに、廊下をつきあたりまで進むと、そのまま階段を下りていく。

キョロキョロ辺りを確認するが、廊下には全く人影がない。そして、階段の上下からも、人が来る気配はなかった。


(い、いまだっ・・・!)


「五十嵐くん・・・!」

タタタと小走りをして、五十嵐くんを引き留めた。

踊場の手前まで階段を下りていた彼は、驚いたように振り返り、切れ長の目を見開いて、階段上にいる私を見上げた。

「・・・なんですか」

こんなときでも、口調は冷静。

そして迷うことなく階段を昇って、私のいる場所までわざわざ戻ってきてくれた。
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