リアルな恋は落ち着かない
山下公園に到着すると、青い景色へ近づいた。

明るい声と光が注ぐ。家族連れや学生グループ、カップルたちで賑わう園内。

入り口からまっすぐ歩き、海に隣接する柵のところで足を止めると、その港の景色にしばし見入った。

目の前に広がる海と空。

行き交う船が、遠くに見える。

近くて遠い、ミニチュアのような建物たち。

港町を感じる景色は、予想よりも格別だった。

「すごい。気持ちいいね」

自然とそんな言葉がもれる。

天気がよくて、本当によかったと思う。

水面に浮かぶカモメの群れも、空を飛んでいる鳥たちも、みんながみんな気持ちよさそう。

開放感に嬉しくなって、広がる景色を堪能する。

「あっち、ランドマークが見える」

「ああ、そうですね」

「あ!あっちにはベイブリッジも見えるんだね」

「うん」

横浜の観光地が、ぐるりと見渡すことのできる場所。

こんな景色が見れたんだ、と、私は思わずはしゃいでしまう。

「・・・なんか、横浜市民とは思えない反応」

「えっ」

「しかも、橘内さん家から結構近いと思うけど」


(・・・確かに)


完全に、観光客状態だった。

来ようと思えば、いつでも来れる場所なのに。

「あんまり来たことないですか」

「うん・・・多分、子どもの時以来かな。家族で来た気はするんだけど・・・。ほとんど、覚えてない」

「そっか。まあ・・・近すぎると逆に来ないか」
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