リアルな恋は落ち着かない
「じゃあ、ありがとう・・・」

エントランスに着いたところで、私は彼にお礼を言った。

頷くと、柊吾はつないでいた手をゆるりとほどき、私の頭をポンポンと軽くたたいた。

彼は多分、こうするのが好きだと思う。

そして私も、こうしてもらうのが心地よく、胸をキュンと震わせた。

「じゃあ、また日曜日」

「うん・・・」

「晴れるといいな、映画とはいえ」

「・・・うん」

別れ際は、いつも離れがたく思ってしまう。

そういう気持ちは、日に日に増していくようで、頭から下りてきた彼の手を、思わずきゅっと握ってしまった。

「・・・どうした?」

「うん・・・」


(やっぱり、今日はもう少し一緒にいたいけど・・・)


一杯でも、飲んだお酒のせいだろうか。

酔いはもう醒めているかもしれないけれど、こんな気持ちが沸きあがったのは、やっぱりお酒のせいかもしれない。

「あの」

「うん」

「その・・・このまま、一緒にいたらだめかな」

「え?」

精一杯の勇気だった。

言った後で、頬の熱さがぐんと上昇してしまう。

「一緒に、って・・・」

「だ、だから、柊吾の家に、一緒に・・・」


(これ以上は、察してほしい・・・)


言葉にするのは限界で、私は握っている手に力を込めた。

すると彼はしばらくじっと考えてから、私のことを抱き寄せた。
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