リアルな恋は落ち着かない
「ど、どどどどどうぞ、お、お気遣いなく・・・!」

あわあわしながら、お兄ちゃんはそう言って、マッハの速さでマンションの中に入ってしまった。

再度「あの!」と、呼び止めようとした柊吾の声は、もはや届いていないようだった。


(・・・お兄ちゃん・・・)


「・・・しまったな・・・。こんなとこお兄さんに見られるとか。考えてみれば優里菜のマンションの前だもんな・・・」

苦悶の表情で、柊吾が眉間にしわを寄せた。

確かに、こんな場所でいちゃついていたのは、私も浅はかだったと思う。


(でも、いくらなんでも挙動不審だよ・・・)


「お兄さん、相当動揺してただろ・・・。挨拶もできなかったし。まずかったな・・・」

後悔の言葉を口にする彼に、私はなぐさめになるかわからない事実を告げる。

「ううん・・・。お兄ちゃん、動揺するとわりと挙動不審になっちゃうから・・・。今日はいつにもまして怪しかったけど・・・。走って逃げたお兄ちゃんもだめだと思う・・・」

我が兄ながら、情けなかった。

せめて、さりげなく歩いて去ってほしかった。

「彼氏ができたって話すらしてなかったし・・・。衝撃が大きかったのかも」

「・・・そっか・・・。まあ、今日はもう遅いからな。これからっていっても失礼だし・・・。今度、もしよければ改めてお詫びというか・・・挨拶に来るよ」

「う、うん・・・!」


(挨拶って・・・な、なんか、結婚前提みたい・・・!!)


そんなことを思って、内心興奮してしまう。
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