リアルな恋は落ち着かない
(・・・っわっ・・・!)


足元が、突然ガクンと揺れた衝撃に、私は重たい瞼を開けた。

どうやら歩いていたところ、ヒールの高さによろけたらしい。


(・・・って、あれ?私、何してるんだろ・・・)


気がつけば、ふらふらと夜の道を歩いていた。

しかも、誰かに思いっきり支えてもらって。

   
(・・・ん?て、わ!課長だ・・・!)


「あっ・・・」

驚きと申し訳なさで、私はとっさに課長から離れようとした。

けれどもすぐさまふらついて、再び課長に支えてもらった。
 
「・・・大丈夫?」

「はい・・・すみません・・・」

まだまだ頭もぼうっとしていた。

状況が理解できずに、私はただ課長に寄り添うようにそのまま前を歩き続ける。

「ごめんね、飲ませ過ぎたかな」

「あ、いえ、はい・・・」


(そうだ、課長と飲みに行ってて・・・それから・・・やだ、寝ちゃったのかな・・・)


朦朧としながらも、恥ずかしいという思いが過ぎる。

フラフラと歩く私に、課長は窺うように言葉をかけた。

「これじゃまっすぐ帰れないだろう。ちょっと、どこかで休んで行こうか」

「・・・はい・・・」

私の頭は、思考がほとんど停止していた。

課長にされた提案に、何も考えることはなく、首を立てに振っていた。

「・・・じゃあ、行こう」

課長の優しい笑顔が見えた。

倒れないようにか、腰をぐっと引き寄せられた。

私はトロンとした頭で、この信じられない状況に、申し訳なさと、なにか危機感を覚えるような、なんともいえない感じがしていた。


(あれ・・・?)


ぼんやりとした視界の先。

前から歩いて来た人物に、私は見覚えがあるような気がして意識を向けた。

その人物が、ピタリと前で立ち止まる。私は落ちそうになる瞼を開けた。


(・・・えーと、見たことあるけど・・・誰だっけ・・・)


「い、五十嵐・・・!」

課長が突然、うろたえたような声を出す。

それで私は頭の中で、「ああ」と言って手をたたく。
< 50 / 314 >

この作品をシェア

pagetop