リアルな恋は落ち着かない
「・・・」

「いや、だから。おまえも。ヘンな誤解はしないでくれ。本当に、今から送るところなんだ」

「・・・」

気まずい空気が流れていく。

何か言った方がいいのかと、考えを巡らせようと努力をするも、思考は上手く回らない。


ブーブーブー・・・。


その時、私の頭に、響くような振動があった。

阿部課長が、はっとしたように胸ポケットに手を入れる。

どうやら、スマホが動いていたらしい。そしてその振動音は、止まらずずっと鳴っている。

「電話ですね」

そう言うと、五十嵐くんが私の腕を引っ張った。

そして自分の身体に私を寄りかからせてから、課長に電話に出るよう促した。

「どうぞ、出てください」

「・・・あ、ああ」

動揺しながら、ピッ、と画面を指で押し、課長はスマホを耳に当てた。

表情は少し強張っている。

「・・・ああ、そう。今から帰るから。・・・いや、違うって。本当に。・・・・・・部下と一緒だ」

課長がぼそぼそ話をしている。

五十嵐くんの私を支える腕の力が、少しだけ強くなったような気がした。

「・・・ああ、わかってるって。すぐに帰るから。・・・じゃあ」

課長がそこで電話を切った。

はあ、とため息をついたその顔は、とてもバツが悪そうだった。
< 52 / 314 >

この作品をシェア

pagetop