リアルな恋は落ち着かない
(どうしよう、五十嵐くん楽しくないよね。なにか、私にできる話題、話題・・・)


考えながら、自分の頭の中の辞書を捜索していると、突然、重要なことがポンと浮かび上がってきた。


(そうだ、不倫疑惑・・・!)


今日は、これを晴らすために来たと言っても過言ではないはずだった。

二人でゆっくり話せる今は、まさにチャンスだと思う。

私は呼吸を整えて、五十嵐くんのことを見た。

「あの、五十嵐くん」

「はい」

「この前・・・酔っぱらった私を、運んでくれた日のことなんだけど」

なんて言って切り出そう。

いきなり、「不倫じゃない」って言い出すのもおかしいだろうか。

考えながら、とりあえずお礼をきちんとしなくてはと、私は再び口を開いた。

「この前は焦ってて・・・ちゃんとお礼も言えてなかったから。すごく大変だったと思うんだけど・・・。本当に、どうもありがとう」

「いえ。ほんとにいいですよ、もう」

「うん・・・」

言葉通り、五十嵐くんは気にしていないようだった。

だけど、不倫疑惑は晴らさないわけにはいかないのだ。

「それで・・・。五十嵐くん、私と課長のこと誤解してると思うんだけど・・・。違うの、へんな関係ではなくて・・・。

あの日は、残業のお礼にって食事に連れて行ってくれただけで、それ以上のことはなにもないんだ。だから・・・不倫だとか、へんな誤解はしないでほしいの」


(い、言えた・・・!)


ここ最近、ずっともやもやしていたこの想い。

それをやっと言葉で伝えることが出来、私にはやり遂げた感が湧き上がる。

けれどそんな満足感いっぱいの私に対し、五十嵐くんは、なんだか不服そうだった。
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