リアルな恋は落ち着かない
「それでもいいって言うんならもう止めませんけど。オレはあんまり、浮気とか不倫とか好きじゃないんで」

「わ、私だって・・・したいと思わないよ」

悪事を「したいならすれば」と冷たく非難されている気がして、私はむっと言い返した。

五十嵐くんに言われたからって、急に課長を悪くは思えないけれど、不倫がしたいなんて、私だって思っていないことだった。

「おお、どうした」

雰囲気の悪さに気づいたももさんが、宇佐美くんとの話を止めて、私たちに話しかけてくる。

なんと説明したものかと私は黙って悩んだけれど、五十嵐くんは気にせずにそのまま話を続けていった。

「もう少し、しっかりした方がいいんじゃないですか。いつも、オッサンたちに守られてるだけじゃなくて」


(・・・え?)


「上の人は、みんな橘内さんに甘いから。それで『いいひと』とか思ってたら、今度は本気で喰われますよ」

「!?」


(な、なにそれ・・・!)


確かに、部長を筆頭に上司はみんな親切だ。

たくさん助けてもらっていることは、確かな事実だと思う。

けれどいま、「甘ったれなおばかさん」とでも表現された口ぶりに、私はカチンときてしまった。


(しかも『喰われる』って・・・。後輩の五十嵐くんに、そんな風に見られてたなんて)


仕事は真面目にしてきたつもり。

上司が優しいからといって、へらへらと甘ったれたつもりはなかった。

悔しい気持ちでぎゅっと唇をかむと、今度は宇佐美くんが大焦りで五十嵐くんのことをなだめ始めた。
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