リアルな恋は落ち着かない
「うん、大丈夫。・・・あ、五十嵐くんは」

「オレも全然。おもしろかったし」

落ち着いた口調で彼が言う。

一瞬、「本当?」と疑ってしまいたくなるような、淡々とした言い方だった。

「橘内さんとまともに話したのも、初めてですよね」

「え?あ・・・そう、かな」

「はい。・・・ああ、もちろん、仕事は別ですけど」


(そう・・・。そうだよね)


まともと言われるとまともかどうかはわからないけど、仕事以外で話をしたのは、確かに初めてだと思う。

私が納得して頷くと、五十嵐くんは話を続けた。

「橘内さん、多分、花山さんと二人だともっと話するでしょう」

「え」


(ドキ・・・)


「おとなしいのかすましてんのか・・・いまはちょっとわからないけど。職場の時とは、かなり違うような気がする」


(う・・・)


見抜かれてる・・・。

図星の指摘に、返す言葉がない私。

五十嵐くんはそんな私を見下ろして、見透かすようにふっと笑った。


(うう・・・。五十嵐くん、やっぱり苦手だ・・・)


悔しいような気持ちになると、ちょうど、赤信号が青に変わった。

私たちは、二人同時に歩きだす。

五十嵐くんは、私の歩幅に合わせた速度で、横断歩道をゆっくり渡った。
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