春色の輝き
デート
「買ってきた。」
速っ!
亮ちゃんは、1分もしないうちに戻ってきた。
ほんのちょっとだけ、息が切れてるのが分かる。
「ありがとう。」
あ、おんぶして改札は、通れないんじゃないかな?
「おんぶしたまま改札は、通れないんじゃない?」
亮ちゃんは、余裕のある顔をした。
「駅員さんに聞く。」
駅員さんに聞く……。
「大丈夫かなー?」
んーダメだった気がするんだよね。
「では、先に、男性の方が通っていただき、女性の方が、ここでお待ちして頂くことになりますが。よろしいでしょうか。」
あ、そういう事になるんだ。
「わかりました。」
亮ちゃんが先に通りに行く。
「わっ!」
駅員さんに手を引かれた。
「あの……」
駅員さん……?
「叶哇…。」
え?なんで、私の名前を知ってるの?
よく見ると、ちょっと、見覚えのある顔。
「な、直樹……?」
その顔は、ずっと見たかった顔。
「しっ……。今、会ったことは、亮には、内緒にしてて。」
え?なんで?
「叶哇。」
亮ちゃんがきた。
「ほら、行こ。」
亮ちゃんは、また、私をおんぶした。
そして、階段を上っていきながら、
「なぁ、あの駅員になんかされた?」
ちょっとギクッてなった。
だって、あの人は、直樹なんだもん。
なんで、亮ちゃんには、言ったらいけないの?
「ううん!何もされてないよ。ちょっと、私がふらついて、助けてくれただけ。」
嘘ついちゃった。
でも、直樹、ちゃんといたんだ。
良かった。ずっと会いたかったんだもん。
「そっか……。ちょっとだけ、ヤキモチ妬いた。」
ヤキモチ?亮ちゃんが?なんで?
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