好きだと言えたら[短篇]
"哲平の1番好きなものって何?"
"…知らね。"
"ねぇってば!"
"2番目は、ハンバーグ。"
ふと思い出した会話。
朱実が必死で、聞いてきた質問。
1番好きなもの。
そんなの…決まってるじゃねぇか
「朱実っ…」
それでも
返事は返ってこなかった。
暗闇。
真っ暗な夜道。
俺の心と比例するかのようなそんな夜。
「くそ…」
結局見つからなくて。
自然に足が向ったのは朱実の家。
もしかしたら、
そんな気がしたのかもしれない。
「やっぱり、いねぇよな」
つくづく馬鹿だと思った。
自分が、馬鹿すぎて嫌になる。
「はぁ…」
もう、もう本当に終わりなのか。
俺達。もう、本当に"バイバイ"なのか。
ぐっと拳を握り締め、下を向いていた顔を上に上げた。
その時。
少し先で立ち尽くす人影。
直ぐに分かった。…朱実だって。
俺を見て、
驚いたのか固まってる朱実。