好きだと言えたら[短篇]
でも、次の瞬間。
俺の中で何かが…崩れた。
そう、
あまりの衝撃。
「本当、感謝してるー!大好きっ」
あまりにも明るい
あまりにも簡単に
電話の相手に大好き、と言葉を告げる朱実。
…大好き?
大好きって、何。
朱実は…
俺が、好きじゃねぇのかよ
何度も何度も
頭の中で反芻する。
大好き、何て言葉。
俺だって言われたことねぇのに。
ピカピカ光るランプ。
朱実の声。
暗闇。
ほのかに染まったピンクの頬。その声、仕草、全部、俺のものじゃねぇのかよ。
そう思った瞬間。
ランプが、消えた。
「…。」
暗闇の中、こちらに向ってくる朱実。少しずつ表情が見えてくる。笑顔で携帯を握り締めている朱実の姿。
「おい。」