好きだと言えたら[短篇]
連絡はいつも俺。
俺が「来い」と言わなきゃ朱実は俺の家には来ない。
いや、それ以前に
朱実からの連絡はほとんど無い。
学校が大変とか
テスト期間だからとか
行事があるとか
学生はいろいろ大変だから。
そう言い聞かせてきたけど実際のところどうなんだろうか。
バイトはしていない…と思う。
「…はぁ」
修輔ってやつは
クラスメートだろうか
不安はどんどん大きさを増す。
午後3時。
今日は早帰りの日。
「橋上君、この後暇かしら。」
「あ、はい。」
帰りの支度をしている最中。
小百合さんからの声。
朱実に電話をしようと、携帯を開いた手を止め小百合さんの後に続き向った先は家からさほど遠くも無い居酒屋。
「いらっしゃい、小百合ちゃん」
「おじちゃん、いつもの2つね」
「あいよ」
良く来ているお店なのか、注文を直ぐに済ませるとカウンターの席へと腰をかける小百合さん。
「あ、その前にちょっと良い?」
「はい。」
そういうと携帯を取り出し電話を掛け始めた。
「亮、ちょっと後輩と飲んで帰るから約束ずらしても大丈夫?…うん、6時に駅。分かった。ありがと」
「彼氏ですか?」
「…うん、ていうか旦那様。」
……。
まさかのカミングアウト。
小百合さんって結婚してたのかよ
「びっくりした?」
「当たり前っすよ」
社内のマドンナが実は人妻だったなんて。
「ふふ。まぁ、私のことより橋上君のことが先。」
「…はぁ、まぁそうですけど」
「はい、生2つね。」