迷走女に激辛プロポーズ
佑都の説明で分かった。
やはり彼女はあの時、私の存在に気付いていたと思う。そして、ワザとキスをしたとしか考えられない。

彼女は、まだ佑都に気がある!
だがらこそ言っておかねば!

「デリカシーの無い佑都なんか大嫌いだ。私は深く傷付いた!」

唇から指を外すと、その指で床のリングを指す。

「遠縁だか、ファミリーだか、そんなの知らない! 著名なデザイナーがデザインした? 元カノがデザインした指輪じゃない!」

そして、今度は佑都の心臓を指す。

「金持ちはバカばかりか! 自分たちさえ良ければいいのか! 相手の気持ちも考えずバカにするのもいい加減にして!」

声が震える。泣くもんか!
腕を下し、今度はギュッと拳を作り握り締める。

佑都は言葉を失ったように、ただ、私を見つめ立ち尽くしている。

「私の気持ちなんて……これっぽっちも考えていない……そんな指輪要らない……だから……だから……」

佑都はハッと我に返ると、私の頭を片腕で抱き、もう片方の掌で口を覆う。何も言わせない、というように……。

「だから、何だ、別れるとでも言うのか! 絶対に別れない。お前の口から、やっと好きだと聞けたんだ。そのすぐ後で別れ話なんか聞きたくない。天国から地獄に突き落とすつもりか!」

フン、勝手に落ちるがいい! そして、針山地獄で、私と同じ針千本の苦痛を味わうがいい!
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