あなたとホワイトウェディングを夢みて

「先輩、大丈夫ですか?」

 廊下で倒れられても困る留美としては、一応、先輩の田中を心配する。
 だが、怒りの矛先を自分らに向けられた田中は半ばパニック状態だ。

「ちっとも大丈夫じゃないわよ! 今の専務の顔、見たでしょ? あれ、絶対に怒ってたわよ! どうしょう……ねえ、どうしたら良いと思う?! ……私、困るのよ」
「……先輩は無関係なので気にしなくてもいいかと思いますけど」

 専務の郁未は留美の態度が気に入らなくて冷たい態度に出たのだ。
 全く視界に入っていない田中は何ら影響はないと、自意識過剰の田中を見て留美は苦笑する。
 しかし、留美の隣に並んでいる自分も、留美同類に思われているのではと、田中は自分のイメージを悪くしていないか不安になる。すると、その場に座り込んでかなり落ち込む。

「置いていきますよ、先輩」

 意外と元気な様子の田中を見て、留美はエレベーターホールへと向かった。
 留美が予想外にも冷たい女だと思った田中は、ブツブツ文句を言いながら留美を追ってエレベーターホールへ行く。

「専務には説明しておきますよ。先輩が素晴らしい人だと」

 田中が落ち込むと仕事に支障が出るのは間違いない。頭を痛めた留美は仕方なく、元気づけようと心にもないセリフを言う。
 田中は思いがけない留美の言葉に目を潤ませて、「やっぱり私の後輩だわ!」と感激して留美に思いっきり抱きつく。
 取りあえず現時点で田中が元気になればそれで十分だと、留美は苦笑した。

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