あなたとホワイトウェディングを夢みて

 自分のデスクへ戻って来た留美たちは、早速午後の仕事の準備に取り掛かった。
 留美は午後一番に専務へ提出するデータを確認し、データをコピーしたCDを薄型のプラスチック製ケースに入れ、説明に必要な資料も複製し準備をし終えた。

「CDの準備はOK、資料も問題なし。そして、提出の時は笑顔で」

 もう一度提出物のチェックした留美は心の準備もし終える。

「いいなぁ。私がその仕事したかったわ」

 留美が確認作業をしている間中、隣のデスクから眺めていた田中が羨ましそうに言う。
 羨望の眼差しを受ける理由が分からない留美には田中の気持ちなど理解出来ない。
 それに、あの専務が相手の仕事かと思うと、『代われるものならば代わりたい』と叫びたいのは留美の方だ。
 それでも、仕事だからと、グッと堪えている留美は連日胃が痛くなる思いだ。

「これから専務の所へ行ってきます。説明があるので少し時間がかかりますけど、心配入りませんから」

 留美が提出物の入ったA4サイズの茶封筒を脇に抱えて部屋を出て行こうとすると、羨ましそうな目で見る田中が「専務によろしくね」と、さっき廊下で留美が言ったセリフを期待している。
 専務に田中の素晴らしさを説明すると、苦し紛れに言ったセリフ。
 留美はそんなセリフなどすっかり忘れて情報処理課を出て行く。

 留美が居なくなると、寂しいことに平社員は田中だけに。ここ、情報処理課は、課長と田中、そして留美の三人だけと言う実に小ぢんまりとした部署で、日頃からとても静かな課だ。

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