あなたとホワイトウェディングを夢みて
「女性同士で見つめ合ってラブシーンでも始まるのかい?」
まるで映画館のスクリーンから抜け出て来た様な、長身で甘いマスクの持ち主で、社長子息にして専務の澤田郁未がそこにいる。
女心を蕩かす様な低音ボイスなのに、それがとても甘ったるい声の持ち主でもある。冷酷な顔に似合わずセクシーな声に、留美は心に反して、魂の底まで響き渡る様で背筋がゾクッとしてしまった。
声が聞こえる方へと振り返った留美は、目の前に立つ最も軽蔑すべき女の敵、傲慢男の郁未を思いっきり睨み付ける。
「まさか我が社の専務の顔を忘れた訳ではないだろう?」
食堂を出た後も、まだハーレム集団を侍らせている郁未がどこぞの王子に見える。
(ハーレムが当たり前の世界なのね)
郁未に媚びへつらう女性社員らを蔑む視線で見つめた留美は、郁未の顔を改めて眺めると軽く会釈をした。
「存じております。澤田家具株式会社社長令息であり専務の澤田郁未様。何かご用でしょうか?」
専務相手に全く怯む様子はなく、まるで親の仇を見る様な鋭い視線を向けていた。
するとそれに対抗する様に、郁未も冷酷な顔をして留美に冷たく言い放つ。
「午後提出のデータを忘れるなよ」
あくまでも上下関係がハッキリとしたセリフだ。
自分が上の立場にあると誇張するセリフに、ますます留美は高慢な郁未に反吐が出そうになる。
そんなやり取りを隣で見ていた田中は顔面蒼白になり今にも倒れそうな様子だ。