あなたとホワイトウェディングを夢みて

「やあ、随分と仲の良いことで。ひょっとして俺は邪魔者だったのかな?」

 部屋へ入るなりいきなり厭味が飛んでくる。
 『いいや』と返事する郁未が聡を見ると、テーブルに座って待つ聡の前には既に料理が運ばれていた。色取り取りのオードブルの皿が並び、聡は自分の分は平らげていた。

「ちょっとトラブルが遭ってね」

 微笑んで答える郁未とは裏腹にかなり不満そうな表情の留美。
 未だに抱きかかえられたまま下ろして貰えない。それがどんなに恥ずかしいことか。『いい加減下ろして』と声を荒らげて言う留美だが、郁未は微笑むと留美の頬にチュッとキスし一向に応じる気は無い。
 これ以上恥さらしな真似をしたくない留美は、郁未の首に手を回し指先でツツーッと羽で触れるようにそうっと優しく撫でた。その留美の柔らかで羽毛のような指にゾワゾワッと感じてしまった郁未は思わず留美を床へと落としてしまう。

「きゃっ」

 米俵のようにドサッと床へ留美を落とすと、郁未は両手で首を押さえて身震いした。
 やっと解放された留美だが、こんな雑な扱いをされるとは思わずに、床に落ちたときに打ったお尻を手で擦りながら体を起こす。

「ちょっと……酷いじゃない? なにも放り投げなくても良いでしょ」

 『いたた……』と声を震わせながら起き上がった留美は、ムッとして郁未の顔を睨み付けると再びドアの方へよたよたと歩いて行く。

「おい、何処へ行くんだよ」
「帰るのよ!」
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