あなたとホワイトウェディングを夢みて

 フォークを皿に戻し天井を仰ぎ見た郁未は留美の姿を思い浮かべていた。
 深いスリットから見え隠れする柔らかそうな肌。スベスベしていて真珠のようだった。すぐ手に届くところにあった美味しそうな獲物をやすやすと逃してしまった。
 そう思えば思うほどにあの真珠の肌を堪能したくなる郁未の身体は熱を帯びる。
 ドレス姿の留美を味わい損なったと、気分は益々落ち込む。

「このまま終わらせるものか」

 レストラン側には謝罪し料理をストップして貰った。請求書は自分に回すように依頼すると、郁未はエントランスへと急ぐ。
 なんとしてでも今日のこのチャンスを逃す理由はない。留美は帰宅しても、ドレスアップにかけた時間も費用も労力も全て自分のもの。それを盾に留美の大切なモノを頂くのだと、意気揚々とタクシーに乗り込んでいく。
 郁未がホテルを出た頃、自分のアパートに帰って来た留美だが、着慣れないドレス姿を鏡に映し出して眺めていた。
 寝室にあるタンスの扉の内側に付いている鏡。上半身しか鏡に映らないが、それだけで予想以上にドレスの胸元が開き派手な格好をしていたと分かる。
 そんな姿でタクシーに乗り外を歩いたのかと思うと、今ごろ恥ずかしさが増す。道理でタクシーの運転手もホテルのドアマンも自分を凝視していたと、今になって納得した。
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