あなたとホワイトウェディングを夢みて
それに、ドレスだけではなかった。首筋から鎖骨、胸元へと肌がいつもよりほんのりと薔薇色に染まっている。ドレスアップした所為か気分が高揚している。
「なんだか身体の芯から熱を感じるわ」
これまで体験した事のない熱。体内から溢れ出てくる熱に頭の芯まで侵されるような不思議な感覚が留美を襲う。
留美のアパート前までやって来た郁未。タクシーの運転手に代金を支払ったものの、身体が急に熱っぽくて怠さも感じる。
「お客さん、顔が赤いけど大丈夫ですか?」
「ああ、ありがとう。大丈夫です」
運転手に気遣いされた郁未は急いでタクシーを降りると、留美の部屋を目指し階段を駆け上がって行く。
ここ数日多忙な日々を送りはしたが寝込む程ではなく、これまでも体調を崩す事などなかった。なのに、階段を上る脚が重々しい。この気怠さは何だろうかと、今更後にも引けない気分の郁未は、留美の部屋の玄関前まで足早にやって来た。
玄関ベルを素早く数回押した郁未は、早くドアを開けろと拳で何度もドアを叩く。
それに気付いた留美は玄関の騒々しさに茶の間に座り込んだ。
「なに? 変質者?」
すると上ずった声で『俺だ』と叫ぶ郁未の声が聞こえてくる。
「専務?!」
まだ『償い』が足りなくて追いかけて来たのか、それとも、この高価なドレスを返せと押しかけてきたのか。どちらにしても、郁未を置き去りにし帰って来たのだから無視出来ないと、渋々玄関へと向かう。