あなたとホワイトウェディングを夢みて
茶の間にやって来た郁未だが、それだけでもう息切れがし始める。身体が熱っぽくて、自分の思考回路にも自信が持てなく、これは絶対に正常な自分ではないと、それだけは判断出来る。
この現象は体調不良だろうかと思っていると、そこへメールを受信した音が聞こえた。郁未は大きく深呼吸し呼吸を整えてから胸ポケットから携帯電話を取り出した。
『親愛なる郁未へ。俺様オススメの媚薬入りワインの味はどうだった? 彼女のにも内緒で入れさせて貰ったよ。興奮冷めやらぬ夜、彼女を何度も愛せるだろう』
身体の意味不明な体温上昇と倦怠感は、『この薬の所為か!』と、怒鳴る気力さえも完全に喪失した郁未は携帯電話を落としてしまう。
そして、自らも愕然として畳の上に崩れ落ち、ドスンと座り込むとそのままゴロンと寝っ転がる。
鈍い音に驚いた留美が慌てて茶の間の方を振り返ると、畳に寝っ転がる郁未を見て急ぎ駆け寄る。
「せ、専務! 大丈夫ですか?」
寄り添い声をかける留美の顔もかなり赤く染まり、息遣いも荒々しくなっている。体が火照り落ち着かない気分が続き辛いだろうにと、郁未は留美の右手を両手で握りしめる。
「専務?」
「君も辛いだろうに……」
絶対に人のお膳立てで女を抱くつもりはない。そう留美に言えたら良いのだが、父親との賭けが話題に出るのを恐れ郁未は口を噤んだ。