あなたとホワイトウェディングを夢みて

 翌朝目を覚ました郁未は、見覚えのない天井が目に入る。

(ここは何処だ?)

 身体の大きな郁未には小さめのシングルサイズのベッドに横たわる。布団は清潔な真っ白なカバーが掛けられ、割とフカフカして寝心地は悪くない。
 起き上がった郁未がベッドに腰掛けると、自分が下着姿なのに気付く。

(下着は着てる……女の匂いと言うより、本臭い)

 ベッドの真正面には背の低い本棚がズラリと並ぶ。背表紙を見ると、どれもこれもコンピュータ関係の書籍だ。本の仕切り版代わりにパソコンのパーツの箱も置かれてあり、女の部屋とは思えないが、綺麗に整頓された部屋だ。
 そして、郁未が横にある箪笥を見て、そこに掛けられているドレスから、この部屋は留美の部屋だと判った。

「嘘だろ」

 目覚めの第一声がこれだ。
 媚薬入りのワインを飲んで、夢現で留美を抱いたのだろうかと自分の姿を見て思い悩む。しかし、ベッドへ入ったものの留美を抱いた感触は今の郁未には全く感じられない。
 下着姿の意味を悩みに悩んだ郁未だが、何も思い出せなく不安に陥る。
 すると、茶の間の方から美味しそうな味噌の匂いが漂って来る。匂いに釣られ郁未は下着姿のまま襖を開けた。
 茶の間のテーブルに二人分の湯呑みや焼き魚が並ぶ。小さなテーブルが更に狭く感じるほど、二人分の朝ご飯の食器が置かれている。
 卵焼きや漬物など、昔懐かしい食卓写真と言うのを学生時代に授業で見たのを思い出していた。
< 115 / 300 >

この作品をシェア

pagetop