あなたとホワイトウェディングを夢みて

「あ、おはようございます。気分はどうですか?」

 シャツとパンツ姿の郁未から視線を逸らす留美を見て、ハッと気付いた郁未は自分が下着姿なのを思い出した。

「あ、いや。大丈夫だ。それより俺の服は?」

 女の前で下着姿を晒すのは慣れているはずなのに、妙に照れ臭くなる郁未はしどろもどろになって訊く。
 すると、留美が『ごめんなさい』と謝りながら、寝室の方へと行く。留美の後ろ姿を目で追った郁未は、ベッド横の箪笥の取っ手にハンガーに下げられているスーツが見えた。

「シャツと靴下は洗っておきました。今朝、乾いていたのでアイロンもかけています」

 家事も完璧なのかと留美の仕事ぶりに驚く郁未。
 ハンガーから抜き取ったスーツを受け取り、郁未は寝室で着替え始める。留美は寝室を出ると朝食の準備に取り掛かる。

「毎朝、こんな朝食を作るのか?」

 襖越しに見えるテーブルの朝食。スーツを着ながら台所にいる留美に質問する。しかし、留美は無言のまま朝食準備を続ける。
 仕事で疲れて帰宅する留美に家事仕事はかなりの労働仕事だ。進んでやりたがる事はない。手抜きしたい時は惣菜を買って食べている。
 けれど専務相手に安物惣菜を出す訳にもいかず、冷蔵庫にある食材で和食を用意した。
 着替えを済ませ茶の間へやって来た郁未。アパートの茶の間の朝食に不似合いな高級ブランドのスーツ。これほど和食の朝食が似合わない人はいないと思いながら、ご飯と味噌汁を乗せたトレーを留美が運ぶ。
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