あなたとホワイトウェディングを夢みて
「……キス……しちゃったのよね」
何故、何度も郁未にキスされたのか。未だに謎で信じられない留美は今も夢の中を彷徨っている感覚だ。
いつになれば目が覚めて現実の世界へ戻れるのか。そんな不思議な世界の住人になった気分に陥っている。
けれど、頬を思いっきり抓ると痛みを感じる。それも、かなり痛い。
これは紛れもなく自分が現実世界に立っている証拠だと思い知る。
「やっぱり夢じゃないのよね……」
冷水に近い温めの湯で頭からシャワーした留美は、全身にシャワーヘッドを当てただけで蛇口を閉めた。
洗面所へと戻った留美は、洗面台隣の洗濯機の上に置いていたバスタオルを掴み、濡れた顔を拭いていく。
脚を流れ落ちる水滴は足下のバスマットに吸い込まれ、水が滴る身体は後に回し、頭から被った湯をバスタオルで拭き上げていく。その姿を洗面台の鏡に映し出しては、自分の顔が平凡でスタイルも普通で特に取り柄のない女だと改めて感じる。
「髪型も顔立ちも何処にでも居る女だわ」
こんな女に何の得があって郁未が近付いてきたのか。もしかしなくても裏がありそうで勘ぐる留美。実際に、数日前まではお互いに睨み合っていた関係だから。
社員食堂で対峙したあの時から、そう日は経っていない。
疑心暗鬼を生じる留美は、出かける準備の手がもつれ思うように捗らない。
やっとドレスを身に着けた時、郁未が迎えに行くと約束をした時刻に迫っていた。