あなたとホワイトウェディングを夢みて

 そして、脳内チェックが終わったと同時にエレベーターの扉が開く。
 するとそこには郁未がいた。
 しかも、郁未ただ一人、取り巻きは無しだ。
 郁未と目が合うと留美は会釈をし、クルッと背を向けた。

「どこへ行く?」

 手には郁未へ届けるデータと資料がある。
 その状況で逃げられないと悟った留美は、振り返ってにっこり微笑む。

「重役の方と同じエレベーターは失礼ですので」

 すると、「構わん、乗れ」と命令される。
 相手が専務では断れない留美は渋々エレベーターへと入って行く。

「お忙しいようですね。出直して参りましょうか?」

 食堂の一件を考えると、今日の郁未へのプレゼンは避けた方が良さそうに感じ、留美は作り笑顔を郁未に向ける。
 しかし、留美の顔を見ても無言のまま郁未はエレベーターのボタンをポチッと押す。
 留美がその手元を確認すると、専務室のある七階のフロアのボタンを押している。
 やはり予定通りに専務を相手にプレゼンをするのかと思うと、留美は気が重くなる。

(絶対にさっきの食堂でのこと、根に持っているわよ。……ああ、どうして今日に限って食堂へ行ったのかしら)

 重々しい沈黙が漂う、狭いエレベーターの中。
 密室状態で、郁未の背から棘が張り出して今にも刺されそうな状況に、留美は息が詰まりそうな気分だ。
 早く到着しないかと、エレベーターの上がる階数を眺めながら小さく深呼吸する。
 すると、留美に背を向けたまま、郁未が質問する。


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