あなたとホワイトウェディングを夢みて
化粧や髪をセットしてやっと留美の身支度が整った頃、郁未と出かける約束の時間をかなり過ぎていた。
しかし、郁未はまだ現れない。留美としてはホッとしているが、今度は逆に準備が出来たのに郁未の姿を待つ時間が狂おしい。
落ち着かない気分を鎮めようと台所へ行って濃いめのコーヒーを淹れる。コーヒーは会社で飲んでいる種類と同じ、瓶入りのインスタントコーヒーだ。
いつもなら胃に負担をかけないようにと、スプーンに軽めに一杯インスタントコーヒーをカップに入れる。なのに、今日は朝から気が張り詰めていた所為か、一日中スプーン二、三杯程度の濃いめのコーヒーを淹れて飲んでいた。
朝からこの調子で何倍も飲んでいた留美は少し胸が重々しく感じる。
「約束の時間を過ぎているわ。中止なのかしら? 中止になってもそれは私の所為じゃないから、今回の取り引きは終わりだわ」
約束通りにディナーへ行く準備は整えた。後は郁未がホテルへ連れて行くだけ。
これを反古にするのならば、自分の責任はこれ以上問わせない。留美は、そのセリフを郁未に突きつけてやるのだと、一気にカップのコーヒーを飲み干した。
「苦っ…………胸焼け? もう、まな板の鯉の気分だわ」
緊張で指先までもが微かに震える留美は、今夜はディナーをするだけと自分に言い聞かせ、何度も念仏のように唱えた。
そして、平静を保とうとカップにさっきより多めのコーヒーを淹れ、ポットの湯を入れて掻き混ぜる。今度は冷凍庫から氷を取り出して数個カップに入れた。