あなたとホワイトウェディングを夢みて
颯爽と歩いて行く二人。
身長差が有るにも関わらず、歩幅が狭い留美が遅れを取らぬ様にと早足でついて行く。
それを分かりながら郁未は歩く速さを緩めない。
(もうちょっとゆっくり歩いてよね! 脚の長さだって違うし、第一私はヒールの有るパンプスを履いてるのよ)
不親切な郁未への嫌悪を必死に抑えて、専務室まで何とか遅れずにやって来た留美だが、息は乱れ額が汗で滲む。
既に疲労困憊する留美を見て、優越感に浸る郁未がフッと笑う。
「さあ、どうぞ」
普通なら憎っくき部下にドアを開けるなど滅多にない郁未だが、ここは自らドアを開き大人の対応を見せ留美を迎え入れる。
余裕な笑みを浮かべ「どうぞ」と再度催促する様に留美を通す。
その態度の高慢さが腹立たしい留美だが、郁未に負けじと同じく大人の対応で、会釈して軽く躱(かわ)すと専務室へと入って行く。
南に面した専務室は、壁一面が大きな窓になり、採光を取り込んだ室内がとても明るくて、重役室の重々しさを吹き飛ばしている。
それに、窓から見える光景が、映画に出てくるビジネス街の様で、留美は一瞬にしてその光景に目が奪われる。
すると、後ろから味気ない専務の命令が聞こえる。
「さあ、データをくれないか?」
郁未の一言で現実に引き戻され、自分がこれから専務を相手にプレゼンするのだと気を引き締める。
「パソコンの電源は入っていますか?」
郁未に負けじと、資料の入った封筒を差し出して言う。