あなたとホワイトウェディングを夢みて

「あの、私の体調ならもう大丈夫ですから」

 抱かれる郁未の胸が逞しくて、華奢に見えていても自分より遥かに胸板が厚く男らしい。抱きしめられる腕の中にすっぽり収まる自分が小さく感じ、それがひ弱にさえ思えると郁未と対等な立場で居られないと留美は『離して』と呟く。

「体は大丈夫なのか?」

 心配そうに横から顔を覗き込んだ郁未。その整った顔が留美の鼓動を速める。郁未の呼吸する息の音までも留美の耳にはっきりと聞こえてくる。
 こんな体勢で『大丈夫か?』と問われても、素敵な男性に抱かれて気分は舞い上がる一方で、頭から湯気が出そうなほどに顔が熱くなる。

「外出して無理したんじゃないのか? 顔が赤いぞ」
「いえ、もう、平気ですから。自宅でのんびりしてたら明日には出勤できますから」

 郁未の腕に更に力強く抱き上げられ腰が浮き上がると、郁未と同じ顔の高さへと持ち上げられる。そして、近付いた顔に留美がビクッと肩を震わせると、郁未の額が留美の額に重なる。

「熱はなさそうだな」

 キスされるかとつい身構えた留美だが、郁未は額で熱の有無を確認しただけで留美の身体をソファへゆっくりと下ろした。

「俺の所為で体調を崩されたと訴えられても困る、今日はここで大人しくしていろ。それに、一人より二人でいた方が安心だろ?」

 留美も郁未のそばで休みたい、そんな気持ちにさせられた。ところが、郁未の首辺りから香水のような匂いが微かに漂う。顔を上げた留美は、郁未の唇の端に口紅らしい赤みがかったものを見つける。
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