あなたとホワイトウェディングを夢みて
一方、俊夫と今後の話を終えた郁未は業務に取りかかっていた。
年末までの残り少ない日数、留美と迎える幸せに満ちた結婚式とハネムーン、少しでも長く休暇を取りたい郁未としては重要な案件はそれまでにすべて終わらせたいと仕事にも力が入る。
これまでと同様の仕事をしているのにも関わらず郁未は心浮かれ、これほど仕事が楽しいと感じたことは無かった。
そこへ秘書から内線電話が入る。
「専務、営業部長が早急にお知らせしたい案件があるそうですが、お時間取れますでしょうか?」
「急を要するのか?」
不満そうに聞き返す郁未は電話機横に置いていた小箱へと視線を移す。
これは留美の為に用意した携帯電話で、前に怒り任せに郁未が壊してしまった電話を弁償すると言った例のものだ。
「早く渡さなきゃな……。留美、困っているだろうな」
「は? 何かお困りですか?」
「いや、別に。それで営業部長はなんと?」
つい留美の名を口走ってしまった郁未はすぐさま意識を電話へと戻し秘書に聞き返した。
「家具ショーについての大事な話だそうですが」
「判った。すぐに通してくれ」
一刻も早く留美に携帯電話を渡したい郁未ではあるが、仕事を疎かにはできず、それも重要な家具ショーであれば尚の事、営業部長の相談を後回しなど言語道断だ。
澤田家具では毎年晩秋に社を挙げての一大イベントとなる家具ショーを開催している。定番商品や流行商品、顧客の購買意欲を掻き立てそうな来シーズンに向けた商品を所狭しと展示する。
招待した顧客へ売り込む場であり大きな商談をまとめる絶好の機会でもある。その為、目玉商品の自社最新作と仕入れた外国のモダンな家具を同時展示しては話題をも提供する。
この日、営業部長との話し合いは長時間に及び、郁未の予想を超えるものとなった。
「家具ショーは前倒しすべきです、専務」
「しかし、……日数的にかなり厳しいな」
「確かにそうですが。特別に我が社に展示品を貸し出ししてもらえたのです。他社に先を越されては元も子もない」