あなたとホワイトウェディングを夢みて
「……ああ、分かった。ドレスは俺が選ぶけど、タキシードは君の好きにしたら良いよ。衣装合わせには必ず一緒に行く」
「ええ、判ったわ。それではまた明日、ごきげんよう」
明るくて柔らかな物腰で郁未と挨拶を交わした彼女は、留美の身体を押し退けるようにドアの前に割り込む。
「あ、すいません」
咄嗟に出た謝罪の言葉。それは、彼女の行く手を塞いでしまったことへの謝罪なのか、それとも自分にはない女性らしさや、男性に媚びた笑顔ができる彼女への負い目へなのか。
彼女の女性らしい物腰と外見の美しさに留美は身体が硬直するが、彼女から目が離せない。彼女の動作を目で追っていると、彼女は部屋から出て行く。
軋み音を立ててドアが閉まると、我に返った留美は室内に郁未と二人だけになったと気付く。
「わ、私も失礼します」
「新人の相沢の件で来たのだろう?」
部外者がいなくなると郁未の声は弱々しく変わり、これまでの行為に後ろめたさを感じるのか威圧感も和らぐ。
許しがたい行為をした郁未なのに、その声に留美はもう少しこの部屋に留まりたい気持ちでいっぱいになる。けれど、やはり弄ばれてしまった経緯から、どうしても面と向かって郁未の顔を見られず背を向けたままだ。
「あ、相沢さんが、私の仕事を引き継ぐって本当なんですか?」
怒鳴り込むつもりで来たのに、郁未と婚約者らしき女性を目の当たりにして声が上ずって上手く喋れない。
「社長からの指示ではあるが、退職する君の後釜に彼女を選んだのは私だ。相沢はプログラムにかけては優秀で、若い女性ではあるが他社からの引き抜きで実力も申し分ない。安心して任せていい」
相沢はヘッドハンティングされたプログラマーだった。そして、退職願を出してもいないのに、やはり郁未にもその話は伝わっていた。
「あの、退職と言うのはどこから聞かれたんですか?」
「社長以外に誰かいるのか?」