あなたとホワイトウェディングを夢みて
自分の父親の縁談ならば幸せになれる。そして、郁未への想いもいつかは思い出に変わるだろう。
お互いに年を取り、髪の毛に白髪が交ざる頃、街中で会ったら自慢の旦那様を見せつけてやれば良い。
(願い通り、寿退職してあげるわよ)
エレベーターホールまで来た留美はエレベーターには乗らず、隣の階段棟を使って下りて行った。勢いよく駆け下りて行った留美だが、勢いはだんだんとなくなり、郁未の顔がちらつくと足が止まる。
「お父さん……私……」
足はとうとう完全に動かなくなり、その場に座り込んだ。
やはり心は簡単には変わらない。辛くて重苦しくて、胸がつかえる留美は膝を抱え込み顔を伏せてしまった。
それから数日後。
退職の為の引き継ぎを終えた後、寿退社した留美は暇を持て余していた。
実家へ戻った留美は時折やってくるウェディングプランナーと何度か打ち合わせに顔を出したくらいで、殆どをベッドの上でゴロゴロと寝転がって過ごしていた。
「有給休暇を充てるからって、出社しなくてもいいのは助かったけど。暇なのよ!」
「だったら、もう少し花嫁修業に力を入れなさい」
ベッドにうつ伏せになって手足をバタつかせて駄々をこねていると、ノックもせずに母親が勝手に部屋へ入って来た。しかも手にはダンボール箱を持って。
「何それ? 重そうね、お母さん」
「そう思うなら早く受け取って頂戴!」
箱が小さい割にはズッシリと重みを感じる抱き方をしている。慌てて起き上がった留美は、急いでベッドから降りると母からダンボール箱を取り上げた。
「?!」
いざ、抱えてみると綿毛のように軽量な箱だった。
母の演技に騙されたと項垂れた留美の背中を、母がポンと軽く叩く。
「あなたのアパートの荷物よ。他にも本やら服やらってあったでしょ。それは引っ越し業者が運んでくれるそうだから」
「……これは? 誰が持ってきたの?」
「お父さんが部屋の解約に行った時に、それだけは持ち帰ったのよ」
部屋の解約はもう何日も前の話だと留美はそう記憶している。
なのに、今頃?