あなたとホワイトウェディングを夢みて
留美が呆気にとられていると、母はにっこり微笑み「ご飯食べに降りてきなさい」とだけ言って部屋から出て行った。
時計の針を見ると、朝かと思っていたがお日様が高々と登っている時刻だ。
「ご飯の前に箱の中身を確認しよ……」
軽い箱だから片手で十分に持てる。もう片方の手で蓋を開けて中を覗き込むと、留美はダンボール箱を床へ落としてしまった。
「な、なんでコレ?」
ベッドに戻って倒れ込み、寝っ転がった留美はうつ伏せになると恨めしそうに床に転がるダンボール箱を見た。父親が何故これを先に持ち帰ったのか謎めいている。
「嫌がらせなの? それとも単なる偶然? 茶の間に置いていたから? ああ、軽いから?」
箱の中には真新しい携帯電話と充電器のセットと、郁未との挙式を夢見たホワイトウェディングのポスターが入っていた。
箱の中身はその二つだけ。それは何か意味があるのか。
ホワイトウェディングはもう過去の話。しかも、苦々しい思いしかない辛い過去だ。なのに厭味としか思えないダンボール箱の中身に留美は目頭が熱くなる。
「ちょっと待って……携帯電話って? 誰の?」
郁未に壊されて以来まだ携帯電話は買い替えていない。しかし、箱の中には新品同様の傷一つない綺麗な代物がある。
「お父さんが? まさかね……」
電話が気になった留美は悩ましげに顔を上げると、身体を起こしベッドに座り込んだ。しばらく考え込んだが誰の携帯電話なのか皆目見当がつかず。
ベッドから降りて箱の前に行くとそこに腰を下ろした。
箱の中をもう一度覗き込み携帯電話をジッと眺めるが、やはり見覚えがなく、今度は手に取って表や裏を見回す。
「新製品? ピカピカ光ってる」
見事な光沢に、新しく購入されたものだと思えた。
「誰のか確認するだけだからね。好奇心で見るんじゃないから……落とし物かも知れないしね」
誰もいないのに、必死にブツブツと言い訳しながら二つ折りの電話を開き電源ボタンを押してみる。