あなたとホワイトウェディングを夢みて
「返さなきゃ」
自分が契約したものではないのだから、携帯電話と充電器はダンボール箱に戻し、ポスターだけ箱から取り出した。ポスターを目の前に掲げ、改めてじっくりと眺めると、やはり自分には恋愛結婚も夢見るような挙式も縁がないのだと実感する。
「そうよね、親が勧める結婚だし、文金高島田ってウェディングドレスじゃないけど……メチャクチャ和式だけど。……着物も悪くないけど、挙式ではドレスを着たかったなぁ」
そして、目が覚めるような青空の如き海を背景に、雪が舞い散る中、花嫁の隣には愛する人がいて、幸せに満ちた笑顔で誓いのキスをする。
勉強一筋のお堅い留美でも乙女心は少なからず持っていた。けれど、夢と現実は違う。勉強のように努力すれば結果は付いてくるなんてことはない。人生とはままならないものだと初めて挫折感を味わう。
「はぁ……青い海……純白のドレス着て素敵だろうなぁ」
しかし、流石に南国のコバルトブルーの海では雪は望めない可能性が高いが、現実離れした光景も留美の心を捉えて放さなかった。
「そうよね、南国ってそもそも雪は降らないのよね? じゃあ、このポスターって?」
ポスターに記載されている撮影場所を確認し、パソコンで調べようとしたところ、急にお腹の虫が鳴き始めた。夕べから何も食べていないことに気付いた留美はポスターを箱の上に置くと部屋から出て行く。
「お母さん、ご飯ある?」
階下にいる母親に向かって大声で話しかけながら階段を下りて行く。すると、留美の声に反応した母親があきれた声で言う。
「年頃の娘がなんですか、もう少し女の子らしい生活しなさい」
「嫁入り先は決まったんだから、もういいじゃないの」
殆ど投げやりな言い方をする留美に、更に母親が口を尖らせる。
「そんなんじゃすぐに家を出されてしまうわよ」
「その時はその時よ」