あなたとホワイトウェディングを夢みて

 見知らぬ相手と結婚させられる自分の身にもなれと、言い返したい留美ではあるが、結婚式を潰そうと父親に直談判はしなかったし、反発もしなかった。
 結局留美は受け入れてしまったのだ、この結婚を。

「あなた不満ならお断りしても良いのよ。お父さんだって、あなたの幸せを願って縁談を持ってきたんだから」

 留美を庇うような物言いだが、台所で料理していたのか、廊下へ顔を出した母親は右手には包丁を持っていて、胡散臭い笑顔で右手をチラつかせ、明らかにその態度は有無を言わせない恐ろしさがある。

「おかあ……さん。それ、危ないから」
「あら、ごめんなさいね。つい、ムキになって。あなたのことを心配したからよ。ほほほほ……」

 どうみても、それは父親の縁談を拒むなと、親には逆らうなと言われている気分だ。

(恐るべし母親)

 自分も結婚し家庭を持てば、母親のように強くなれるのだろうかと苦笑する。
 「強い」というより、かなりふてぶてしい嫁になりそうだと思えると笑いが出る。

「さあ、ご飯を食べてしまいなさい。今日はお父さんのお友達が用意してくれた花嫁衣装を見に行くわよ」
「はいはい……」
「本当に素敵な衣装が沢山あるんだから。それにね、豪華な刺繍が一面に施された着物って憧れるわ。お母さんの時なんて予算の都合でドレスだけだったのよ。それも、当時の流行の教会で式を挙げただけなのよ」

 留美の両親は教育に熱心なあまり恋愛や結婚にはお金をかけなかったと、これまで何度か聞かされてきた話だったので、留美は生返事だけして茶の間へと向かう。

「ちょっと、留美、聞いているの?」
「それ、聞き飽きたわ。それより、ご飯まだ?」
「あなたね、自分のご飯くらい自分でよそいなさいよ」
「えー、疲れるからやだっ」

 実家へ戻ってきてからやる気が起きない留美は自分の事すらまともにやらない。まるで動物園にいるナマケモノのようで、だらだらした生活を送っている。
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