あなたとホワイトウェディングを夢みて
 最近では盆正月やお彼岸のお墓参りにも殆ど顔を出さない従兄弟らなのに、今日は皆が勢揃いしている。

「こらっ、主役になんてことを言うの! あんたたちもさっさと食べてしまいなさい」

 憎まれ口を叩く従兄弟らは、まだティーンエイジャーで落ち着きがない。しっかり叔母らに睨まれ茶の間へと引っ込んだ。
 相変わらずの光景だと苦笑していると、留美は母親に座敷へと連れて行かれた。するとそこには晴れ晴れしい日に相応しい、日本一の花嫁の為の衣装が飾られていた。

「きれい……」

 目が覚めるような朱色の生地に金糸で豪華な鳳凰が刺繍されている。今にも飛び立ちそうな勢いのある素晴らしい鳳凰に留美の口から思わず溜め息が出る。

「世界に一つしかない、今日の花嫁の為に作られた色打ち掛けよ。そして、こっちが、挙式の時に着る白無垢よ」
「真っ白だわ……」

 郁未との挙式で夢にまで見たホワイトウェディングと同じ、純白の花嫁衣装。
 ただ違うのは、純白であってもドレスではなく白無垢だ。この座敷に似合いの純和風花嫁衣装。
 聖職者の娘に似合いの古風で純真無垢な着物姿。
 シルクの光沢の素晴らしさに留美の心は和装に引き込まれていく。恍惚として着物を見つめていると、横から母親が瞳を潤ませながらしみじみと呟く。

「これを着て幸せになりなさい」
「お母さん……」

 いよいよ挙式が近付いてきたのかと留美の胸が熱くなると、丁度その時、玄関の扉が開き誰かが家の中へと上がって来る。それも一人ではなく、二人、三人と複数のざわめきだ。

「なんなの?」
「あら大変。ほら、早く顔を洗ってらっしゃい。美容師さんたちには待つ間、お茶を飲んでて貰うから」

 慌てた母に座敷から追い出された留美は、廊下へ出たところですれ違った美容師らに顔を合わせるなり「おめでとうございます」とお祝いを述べられた。
 美容師の声に気付いた親戚の者たちが次々に茶の間から現われて、美容師を座敷へ案内したりお茶の準備に行ったりと、まさしく結婚式の朝の風景が拡がる。


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