あなたとホワイトウェディングを夢みて
違和感を抱くその光景に足が止まる留美は母親に背中を押され、洗面所へと連れて行かれる。
「もしかして、今日って……」
まだ自分の挙式日だと信じたくない留美は、最後の悪あがきのつもりで訊く。
「あなたの結婚式の日でしょ。何度も話したわよね。昨夜だって、何を言っても上の空だし生返事しかしなかったでしょ?」
「……そうだっけ。顔を洗ったらご飯を食べるから」
「ご飯は軽くよ。食べ過ぎは駄目よ」
一人だけ洗面所に入って行った留美はドアを閉めると、外界の音をシャットアウトし、しばらく洗面台の前で俯いたまま身動きひとつしなかった。
郁未に想いが通じないどころか弄ばれた事実に、投げやりな気持ちで受けてしまったこの結婚式、いざ、当日になると当惑してしまい、今更逃げも隠れもできないと胸が苦しむ。
「おーい、何やってる? みんな首を長くして待ってるぞ。早く花嫁衣装着て安心させろ」
さっき留美に皮肉を言った従兄弟の一人が、洗面所から出て来ない留美の様子伺いに洗面所のドアの外から声をかけてきた。
「すぐ行くわよ。せっかくの晴れ姿よ、綺麗な姿に変身中なの」
「素は変わらないんだから、無駄な足掻きだ。でも、まあ、お前は、それなりに見られるから大丈夫だ」
今日の主役の花嫁にお世辞でも「それなりに」とは酷いと、ドアを開けて飛び出した留美は従兄弟の顔をめがけ指さす。
「親戚中、いえ、日本中どこを探しても今日の最高に美しい花嫁はこの私よ!」
留美のセリフに圧倒された従兄弟は爆笑すると、両手を上げて降参のポーズをとると留美に背を向けた。
「おっかねえ面。やっぱ、お前、旦那に逃げられんなよ」
「ちょっと、縁起でもないこと言わないでよね!」
まだ一度も顔合わせをしていない夫となる人。彼は、どんなに美しく着飾っても自分の好みでなければ花嫁から逃げ出すのだろうか。それとも、郁未のように、好意を持たなくても女性を抱きしめキスし、初夜には同じベッドで眠るのだろうか。そして、心にもない愛を囁きながら、新妻の身体を貪るのだろうか。
「もしかして、今日って……」
まだ自分の挙式日だと信じたくない留美は、最後の悪あがきのつもりで訊く。
「あなたの結婚式の日でしょ。何度も話したわよね。昨夜だって、何を言っても上の空だし生返事しかしなかったでしょ?」
「……そうだっけ。顔を洗ったらご飯を食べるから」
「ご飯は軽くよ。食べ過ぎは駄目よ」
一人だけ洗面所に入って行った留美はドアを閉めると、外界の音をシャットアウトし、しばらく洗面台の前で俯いたまま身動きひとつしなかった。
郁未に想いが通じないどころか弄ばれた事実に、投げやりな気持ちで受けてしまったこの結婚式、いざ、当日になると当惑してしまい、今更逃げも隠れもできないと胸が苦しむ。
「おーい、何やってる? みんな首を長くして待ってるぞ。早く花嫁衣装着て安心させろ」
さっき留美に皮肉を言った従兄弟の一人が、洗面所から出て来ない留美の様子伺いに洗面所のドアの外から声をかけてきた。
「すぐ行くわよ。せっかくの晴れ姿よ、綺麗な姿に変身中なの」
「素は変わらないんだから、無駄な足掻きだ。でも、まあ、お前は、それなりに見られるから大丈夫だ」
今日の主役の花嫁にお世辞でも「それなりに」とは酷いと、ドアを開けて飛び出した留美は従兄弟の顔をめがけ指さす。
「親戚中、いえ、日本中どこを探しても今日の最高に美しい花嫁はこの私よ!」
留美のセリフに圧倒された従兄弟は爆笑すると、両手を上げて降参のポーズをとると留美に背を向けた。
「おっかねえ面。やっぱ、お前、旦那に逃げられんなよ」
「ちょっと、縁起でもないこと言わないでよね!」
まだ一度も顔合わせをしていない夫となる人。彼は、どんなに美しく着飾っても自分の好みでなければ花嫁から逃げ出すのだろうか。それとも、郁未のように、好意を持たなくても女性を抱きしめキスし、初夜には同じベッドで眠るのだろうか。そして、心にもない愛を囁きながら、新妻の身体を貪るのだろうか。