あなたとホワイトウェディングを夢みて
「後で確認をするから今日はこれで下がりなさい」
俊夫の様にいつまでも居座られては困る郁未は、留美が手に持っていたメディアと資料を受け取ろうと手を差し出す。
留美は目の前に出された郁未の手が、男にしては細くて長くてキレイな指だと、つい見入ってしまった。
「資料を」
郁未の声でハッと我に返った留美は、慌てて資料を手渡した。
「どうぞ。……では、失礼します」
「あ、ちょっと、待った」
郁未に声をかけられドキッとした留美が、顔を強張らせて郁未の顔を見る。いつもと郁未の雰囲気が違う気がして、留美は少し緊張する。
すると郁未は、急いでデスクの引き出しから冊子を取り出し、それを留美へ渡す。
「これも納期は早い方がいい」
「分かりました」
留美は資料を受け取ると、軽く会釈をし専務室から急いで出て行った。
昨日も確かに専務室の雰囲気はピリピリとした緊張感があった。しかし、今日はまたなんとも言い難い張り詰めた感が郁未から伝わって来た。
それは、社長が同じ部屋に居たからなのか。いつもと違う空気に、留美はまだ身体が強張っている。
留美は、自分はもっと冷静で周りに左右されないタイプと思っていただけに、この緊張感に圧倒される自分が情けなくなると、ブツブツと呟きながら持ち場の情報処理課へと戻って行く。