あなたとホワイトウェディングを夢みて
二人が見た資料は専務からの仕事依頼の説明書だ。しかし、パソコンの授業さえ受けていれば中学生でも簡単に作成できるレベル。
あまりにも人を小馬鹿にした依頼に、留美はメラメラと目を燃え上がらせて作業していた。
一方、留美に新たな仕事を依頼した郁未は――
今頃資料の中を見て、留美が腹立てて怒っていると思うと愉快な気分になる。
未だに居座る俊夫へコーヒーを淹れている郁未だが、つい留美の怒り顔を想像するとクスッと笑いが出てしまう。
郁未の表情から笑みが漏れると、俊夫は郁未の子供の頃の無邪気な笑顔を思い出す。郁未が幼い頃もこんな風に自分を和ませてくれたと、俊夫は昔を懐かしむ。
そして、思い出したように俊夫が質問する。
「さっきの女子社員はなんと言ったかな?」
「情報処理課の女ですか?」
留美の話題が上がると不機嫌になる郁未。
俊夫が留美の話を振ったと同時に、郁未のコーヒーカップを扱う手が急に雑になり、テーブルの上に置くその動作もかなり荒々しくなる。
「どうぞ、ご所望のコーヒーですよ」
秘書に余計な話を聞かれたくなくて郁未自らコーヒーを淹れた。
しかし、俊夫との話題が縁談でなければ、専務室にあるインスタントコーヒーなどでなく、秘書室にある豆コーヒーを淹れさせたものをと、鬱陶しそうにする。