あなたとホワイトウェディングを夢みて
「ああ、ありがとう」
「コーヒーを飲んだら出て行って下さい。それから自分の嫁は自分で決めますから、それだけは覚えておいて下さい」
香ばしいコーヒーの香りを嗅ぐ俊夫に、郁未が何度も釘を指す様に言う。
腕を組んで仁王立ちになる郁未はソファに座る父親を見下ろし、『聞いてますか?』と再度確認する。
しかし、俊夫は、安物インスタントなのに、カップを揺らしながら香りを楽しんだ後、コーヒーを飲み始める。
「暇じゃないんで、早々に出て行って下さいよ」
郁未は如何にも多忙なフリをし、自分のデスクへと戻って行ってはパソコンの電源を入れる。
「確か佐伯留美と言ったな」
「それが何か? もし気に障ったのであれば後で叱っておきますが」
郁未が留美の持ってきた資料を確認しながらそう言うと、俊夫がカップをテーブルに置き、腕を組んで考え事を始めた。
「いや、確かあの子は……」
俊夫と余計な会話をする気が無い郁未はパソコンを操作し始める。業務に戻る素振りをするも、俊夫は一向に部屋から出て行こうとしない。
腕を組みわざとらしく考え事をしている様に見せかける俊夫に、郁未は苛立ちながら訊いた。
「それでいったい何なのです、今度は」
無反応な俊夫が腹立たしい郁未は、椅子から立ち上がるとソファへと行き、俊夫が座る真向かい側へ腰を下ろした。