あなたとホワイトウェディングを夢みて
「何ですか?」
「そう言えばお前は昔から自分の思い通りにならない時は、相手を貶しては自分の言い分を通そうとしていたな」
いきなり子供時代の話を振られた郁未は、不愉快な気分にさせられ、プイっと視線を窓の外へと向けた。肘掛けに腕を乗せると、落ち着かない気分の郁未は肘掛けを指先で突く。
「手に負えなくなると、最後にはそうやって視線を逸らしていたな」
いつまでも子供扱いされては堪らない。それに、昔話に花を咲かせるつもりも無い。
今は専務として責任ある仕事を任され、社では重要な存在なのだと、自分の力を誇示する視線を偉そうにも俊夫に向けた。
そんな態度こそがまだ子供だと言いたげな顔の俊夫は、フッと笑うとソファーに深く座り脚を組み直す。
「どうだ、俺と賭けをしてみないか?」
既に勝ち誇った顔で俊夫が言う。
それに、普段自分を『俺』と言わない俊夫が口にする時は、社長ではなく父親として喋る時。しかも、何かを企む卑怯な顔をした時に出る言葉だ。
「賭けですか?」
父親の策略に簡単に乗る幼い子供ではない。
しかし、売られた喧嘩から逃げる弱虫ではないと、郁未もこの賭けに勝ったつもりで微笑み返す。